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令和4年11月1日

~改善基準告示の複雑化で周知課題に~


トラック運転者の長時間労働の改善に取り組んでいる厚生労働省は、今年8月に設置した特別相談窓口での対応状況を明らかにしました。設置から2カ月間で76件の相談を受け付け、運送事業者に社内規定の整備方法などを指南するだけでなく、荷主企業に対しても、荷待ち時間の削減につながるアドバイスを行っています。令和6年4月には、時間外労働の上限規制(年960時間)とともに、改正労働時間等改善基準告示の適用も始まることが見込まれます。同窓口などを通じて、改正後の告示の内容を周知し、新しい規制に対応するための具体策を提示することが、今後ますます重要になってくるでしょう。
改善基準告示の改正の方向性については、労働政策審議会の専門委員会が9月に最終的な取りまとめを行っており、その上位組織の労政審労働条件分科会も10月11日に取りまとめ内容を了承しています。
厚労省は今年12月に改善基準告示を改正し、令和6年4月1日から適用を開始する予定です。
・・・トラックの改善基準見直しの方向性をみると
拘束時間や休息期間、連続運転時間などの項目でそれぞれ例外的な扱いを盛り込んでおり、改正前に比べて複雑なものになることが見込まれます。たとえば拘束時間については、年間3300時間かつ1カ月284時間を限度としたうえで、労使協定を締結した際の例外措置として、年間3400時間を超えない範囲内で、月310時間まで延長できることとしました。延長する場合でも、284時間を超える月が3カ月を超えて連続しないよう求めています。1日の拘束時間は、通常13時間以内、最大15時間とする一方、例外的取扱いとして、宿泊を伴う一定の長距離貨物運送については最大16時間(1週間に2回限り)まで拘束できるようにします。いわゆる勤務間インターバルに当たる休息期間は、「基本は継続11時間以上、下限9時間」に見直す方向です。ただし、一定の長距離貨物運送については、1週間に2回まで下限を8時間に引き下げます。その場合、運行終了後に継続12時間以上の休息期間を与えることとします。現行告示で4時間までに制限している連続運転時間は、サービスエリアやパーキングエリアに駐車・停車できないなどやむを得ない場合に最大30分延長できるようにします。改正前と同様、連続運転時間の限度を超える前に30分以上の中断時間を確保しなければなりませんが、中断時間については、原則として「休憩」を与えるよう見直します。中断はこれまでどおり分割が可能なものの、分割した中断時間は現行の「10分以上」から「概ね10分以上」に変更します。
このほか、拘束時間と休息期間について、引き続き、2人乗務や隔日勤務、フェリー利用時の特例を設けます。さらに、運行中の車両故障など、通常予期できない事象に遭遇した場合に1日の拘束時間や運転時間などの規制の適用外とする例外措置を新たに盛り込む方向です。
10月11日の労働条件分科会では使用者側委員が、「改正後の改善基準告示は例外措置が多く、分かりにくいという印象がある」と指摘。長時間労働は運送事業者側の努力だけでは是正できないことから、「荷主への周知が大事」との認識を示しました。
今後、厚労省では、新たな取組みとして、労働基準監督署による荷主企業への要請を行っていく方針です。長時間の恒常的な荷待ち時間を発生させないよう努めることや、運送業務の発注担当者に改善基準告示を周知することなどを要請していくといいます。改善基準告示が改正によって複雑になるなか、荷主企業が正しく理解できるようにするためには、行政において規制内容を分かりやすく示したリーフレットを用意したうえで、特別相談窓口での対応時や、荷主企業への配慮要請などの場面を利用して、丁寧な説明を行っていくことが必要になるでしょう。

<労働新聞>






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