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令和5年7月1日

~特別条項の手続き軽視は送検リスクに~


日頃、全国の労働基準監督署が労働基準法違反で書類送検したケースをチェックしていると、36協定(時間外・休日労働協定)の締結時における過半数代表者の選出手続きが不適切だったために、有効な36協定がなかったと判断されている事案を見かけることがあります。たとえば昨年7月に送検された愛媛県内の青果卸売業では、選挙や話合いなどの民主的な方法をとらずに過半数代表者を選出して協定を締結。労働者2人に対して最大月105時間に及ぶ時間外労働を行わせていました。
今年5月には、使用者の意向に沿う形で過半数代表者を選出し、36協定が無効な状態で技能実習生に時間外労働をさせていた岐阜県内の縫製業が送検されています。
他方、彦根労基署がこのほど送検した製造請負業の事案(労働新聞6月26日号4面)は、36協定の特別条項の適用に当たって必要な手続きを怠ったために特別条項で定めた部分が無効と判断されるという、送検されたケースとしては珍しい事案でした。
36協定については、時間外労働の上限規制の施行(大企業2019年4月、中小企業2020年4月)に合わせ、届出様式が変更されました。特別条項を設けて、36協定で定めた限度時間を超える時間外労働を行わせる場合には、限度時間を超えて働かせることができる回数(年6回以内)や、健康および福祉を確保するための措置、限度時間を超えて働かせる場合の手続きなども定めなければならなくなりました。
前述の製造請負業では、特別条項付き36協定を労基署に届け出ていたものの、自社の36協定で定めた限度時間(月42時間)を超えて働かせる際に、協定届において手続きとして記載していた「労働者代表者に対する事前通知」を行いませんでした。
特別条項では、99時間までの時間外労働・休日労働を可能としていましたが、その部分は適用されず、限度時間を超えた違法な時間外労働と判断されました。突発な仕様変更やトラブル対応などに備えて特別条項付き36協定を締結する企業においては、違法な時間外労働との指摘を受けないよう、限度時間を超える労働に従事させる際には36協定で定めた手続きを着実に履行しておきたいところです。

<労働新聞編集>






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